【書評】『N』道尾秀介|記憶と真実のズレにゾクッとする心理ミステリー

ミステリー

■ この本を読んで感じたこと

道尾秀介さんの小説『N』は、
「信じる」という行為がいかに曖昧で危ういものかを突きつけてくる作品でした。

人は、自分が見たもの、聞いたものを「真実」だと思い込みます。
けれど、それが“他人の記憶”の中ではまったく違う形をしていたとしたら?

本作は、そんな“記憶と事実のズレ”を軸に展開する多視点ミステリーです。
ある事件をめぐり、複数の人物の視点から物語が進行する中で、
読者自身の「思い込み」さえも揺さぶられます。


■ ネタバレなしの感想:思い込みは、時に人を殺す

読み進めるうちに、
「本当に信じていいのか?」と疑いたくなる描写がいくつも登場します。

道尾さん特有の静かで不穏な空気の中に、
読者が当たり前だと思っている“信頼”や“常識”がじわじわと壊れていく感覚は、まさに圧巻。

最後のページを閉じたとき、
「自分は他人からどう見られているのか?」と考えてしまいます。


■ こんな方におすすめ

  • 人間関係の機微や心理描写が深い作品が好きな方
  • 『カラスの親指』『向日葵の咲かない夏』など、道尾作品が好きな方
  • 読者の思い込みを裏切る構成の物語に惹かれる方
  • ネタバレなしでミステリーを純粋に楽しみたい方

■ 印象に残った一節

「誰かの中にある“私”は、本当の私ではない。けれど、あの人にとっての私は、それだった。」

たとえ事実がどうであれ、人は自分の「解釈」で他人を見る。
それが人間関係の難しさであり、同時にこの作品の核心です。


■ 書籍情報

  • 書名:N
  • 著者:道尾秀介
  • 出版社:集英社文庫

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■ まとめ

『N』は、
人間の「記憶」「解釈」「信頼」がいかに主観的かを、
これでもかというほどに描き出してくる作品です。

ミステリーとしての完成度はもちろん、
人間関係に悩んでいる人にも響く深いテーマが詰まっています。

読み終えたあと、
あなたの中の“当たり前”が、少しだけ揺れるかもしれません。

ぜひ読んでみてください。


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