【心が揺れる読後】『同志少女よ、敵を撃て』|「撃て」と命じられた少女が、戦争と人間の本質にたどり着くまで。

ヒューマンドラマ

「なぜ人は人を撃つのか?」
「敵とは誰なのか?」
戦争の中で“少女”が見たのは、正義でも勝利でもなく――「人間の本性」だった。


■ あらすじ(ネタバレなし)

舞台は1942年、独ソ戦が苛烈を極める東部戦線。

ウクライナの小さな村に暮らしていた少女・セラフィマ。
ある日突然、村はドイツ軍に襲われ、目の前で母を殺される。
絶望の中で彼女は、ソ連の女性スナイパー部隊にスカウトされる。

「敵を撃て」と命じられた彼女は、復讐の炎を胸に銃を握る。
だが、戦場の現実はあまりにも過酷だった。
死と隣り合わせの任務、仲間の死、上からの命令、戦争の理不尽……
その中で彼女が見たものとは。


■ この小説が読者の心を揺さぶる理由

① 「戦争のリアル」を女性の視点で描いた稀有な作品

男性兵士が主役になりがちな戦争小説の中で、本作はあえて女性狙撃兵に焦点を当てる。
それにより、「戦争に巻き込まれる弱者」の視点から、より深く、より鋭く人間の哀しみが浮かび上がる。

② “敵”を撃つことの意味を問う、哲学的な問い

ただ撃てばいいのか?
正義の名のもとに、人を殺すことに意味はあるのか?
物語が進むにつれて、セラフィマの葛藤は私たち読者自身の胸にも迫ってくる。

③ 国家、命令、友情――少女が“自分”を見つけていく成長物語

セラフィマは戦争に翻弄される「ただの被害者」では終わらない。
彼女は戦いの中で、人間の矛盾や美しさに出会い、自分自身で「答え」を見つけていく。
そこにあるのは、成長の物語であり、人間の希望そのものだ。


■ 読後に残った余韻

ただのフィクションではない。
遠い世界の話ではない。
これは今の世界と地続きで、私たちの中にもある“暴力性”や“正義”への問いを突きつけてくる。

「撃つべきは誰か?」
「撃たれているのは、本当に“敵”なのか?」

その問いが、胸にずっと残ります。


■ こんな人におすすめ

  • 戦争小説や歴史物に興味がある
  • テーマ性の深い物語を読みたい
  • 「人間って何だろう」と考えるきっかけが欲しい
  • 今この世界の情勢を、別の視点から見つめ直したい

🔖心に刺さった一節(ネタバレなし)

「あなたの憎しみが、あなた自身を壊すのです」

この言葉が、この物語全体の“痛み”と“救い”を象徴しているように感じました。


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