「生む／生まれる」を問う小説――朝井リョウ『生殖記』が描く、生のリアルと葛藤

出産をめぐる価値観、妊娠をめぐる選択、そして“生殖”という言葉の持つ、生々しい重さ。

朝井リョウの小説『生殖記』は、その一つひとつに光を当てるように、繊細でリアルな筆致で描かれています。

この物語を読んでいると、「命は尊い」という言葉の、その裏側の迷い、痛み、葛藤が、手に取るように見えてくるのです。

登場するのは、妊娠・出産・不妊・性・キャリア…それぞれの立場で「生殖」と向き合う人々。

「母になれない私には、女性である価値がないのか」
「産むことに迷いがある私は、わがままなのか」

こうした問いが、読者自身の奥深くにまで沈み込み、静かに波紋を広げていきます。

正直、途中で読むのを止めたくなる瞬間もありました。
なぜなら、自分の価値観を突きつけられるような場面が何度もあったから。

でも、そこから逃げずに読み切ったあとに残ったのは、「人って、こんなにもそれぞれでいいんだ」という安堵と、「命にまつわる話を、もっとしていいんだ」という解放感でした。

『生殖記』は、出産・結婚・家族の価値観が多様化する今だからこそ、読む意味のある作品です。
答えは出なくても、「このまま考え続けたい」と思わせてくれる――そんな一冊でした。

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💡 読者への問いかけ

あなたにとって「生む」とは、どういう意味を持ちますか？
この物語の中に、あなた自身の思いと重なる登場人物が、きっといるはずです。